【7/14】戦争遺訓を考える③

本日は山下大将の第三遺訓です。
フィリピン戦を終り、敗北して囚われ、絞首刑になる前に山下大将が記した第三遺訓ほど、驚くものはありません。それは日本の女性に当てたものであったからです。

「従順と貞節、これは日本婦人の最高道徳であり、日本軍人のそれと何等変る所のものではありませんでした。この虚勢された徳を具現して自己を主張しない人を貞女と呼び忠勇なる軍人と讃美してきました。そこには何等行動の自由或は自律性を持ったものではありませんでした。皆さんは旧殻を速かに脱し、より高い教養を身に付け従来の婦徳の一部を内に含んで、然も自ら行動し得る新しい日本婦人となって頂き度いと思うのであります。平和の原動力は婦人の心の中にあります。皆さん、皆さんが新に獲得されました自由を有効適切に発揮して下さい。自由は誰からも犯され奪はれるものではありません。皆さんがそれを捨てようとする時にのみ消滅するのであります。皆さんは自由なる婦人として、世界の婦人と手を繋いで婦人独自の能力を発揮して下さい。もしそうでないならば与えられたすべての特権は無意味なものと化するに違いありません。」

「従順と貞節・・・日本婦人の最高道徳」
「日本軍人と同じ・・・男女同じ」
「従順と貞節・・・虚勢された徳・・・自己主張しない人」
「貞女も忠勇なる軍人・・・自由と自律性を持たない」

家長制度のもとの古い日本について先入観を抱いてしまう現代の日本人ですが、敗戦直後で、陸軍のトップであった山下大将のこの文章は、私自身も驚きを隠せませんでした。現代でも最先端を行く認識です。貞節も大事だけれど、それを有効にするためには自由と自律性であると記されています。女性に求められるのは、高い教養、自ら行動しうる人とし、平和の原動力は婦人の心にあるから、自由に協力して平和を維持してもらいたいと結んでいます。現在のヨーロッパかぶれの評論家が唱える男女同権とはレベルが違います。女性と男性はもともと対立するものではなく、女性の特性、男性の特徴をそれぞれが発揮して国や人類を発展させる・・・それには高い教養と自由が必要で、従順とか貞節という言葉のなかに含まれる虚勢された徳の方に行かないこと・・・それはまさしく現代でも日本の女性の多くがまだ達成できないことであるのです。

「女は大学に行く必要がない」と言った男性は、山下大将がこの世を去って50年以上も存在しました。「女は子供を産む機械だ」と21世紀になって国会議員が発言もしました。男性側からの女性蔑視だけではありません。女性の方も平和な天下国家、日本の未来(子供の将来)を考えるより、今日のグルメ、テレビのタレントのゴシップに明け暮れているように私には感じられます。

山下大将が妻に当てた辞世の句を紹介します。
「満ちて欠け晴れと曇りにかわれどもとわに冴え澄む大空の月」
人生にはいろいろある。良かったり悪かったりするけれど、私は満足してこの世を去る。今日もいつもと変わらない月が美しく夜空に輝いている。さようなら・・・

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