【5/6】安全を考える

福島原発で放射性物質を海に流すことになったらしいのですが、安全とは何かを整理してみたいと思います。自動車等の交通は安全かどうかといいますと、毎年交通事故で数千人亡くなっています。令和2年は少なくて、2839名亡くなり数十万人が負傷しました。一方で、もし電気炊飯器が爆発して主婦が一人でも亡くなったら、今の日本社会だったら大騒ぎになるでしょう。なぜ、交通事故は騒がないのかということですが、これは代替手段があるとかないとか、その他いろいろな理由があるのですが、交通事故の安全は、実は安全ではなく「許容」があるのです。大きく3つのランクがあり、①受け入れられるか、②望ましくないが耐えられるか、③社会的に耐えられない、の3つです。原発も新型コロナも許容の議論で進むべきものが、安全を議論してしまうので議論が先に進みません。

原発から出る放射性物質についても許容について論点を当てるべきです。今回の汚染水(処理水)はトリチウムという放射性物質なのですが、放射性元素は200種類くらいあり、人体への影響として、ヨウ素ならば甲状腺に影響があり、セシウムは心臓、妊婦さんに影響ああるもの、幼児に影響があるもの、平均的に影響があるものや局所的に影響があるものなどなど大変複雑です。これらは研究が進んでいまして整理されていますが、今回のトリチウムだけを抜き取り安全を語りますと、学問的には分からないという答えが正解です。200種類の放射性元素の一部ですから、全体にどのような影響があるのかを検討すべきで、個別の元素を取り上げれば、全て安全ということになってしまうからです。自然放射線や、医療放射線による被ばくなど、地域ごとで異なる要因もあり、放射線被ばくを検討する際は、人それぞれの人生によっても異なってくるのです。そこで許容限界を定めた結果、原発などの産業界から放出して良い許容限界を1mSV(ミリシーベルト)/1年としています。ちなみにビキニからもまだ放射性物質が飛んできており、おそらく0.5mSVくらいだと思います。これら、私たちの周りにある自然放射線、医療放射線、ビキニ放射線や福島原発をすべて加算して、全体で5mSV/一年の被ばくが許容限界とされているはずです。一年に5mSV浴びると、どれくらい日本人が亡くなるか、あるいは重篤患者が発生しているかですが、重篤な遺伝性疾患、重度の回復ができない癌患者が一年で6000名以下になります。この人数を許容限界としています。逆に数千名の患者が発生しているのが現実です。しかし、交通事故並みに抑えられていますので、社会が許容していることになっているのです。

安全を語る際、個別に焦点を当てることで、どんな言い訳も通ってしまうので、政府とマスコミは個別に論点を絞りたがります。新型コロナウィルス騒動も、個別の変異株がどうとかではなく、ウィルス全体と人間社会の共存共生という論点に早く移行していかないかな、と願っています。

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